メビウスの指輪(応用編)
作品紹介の第4回で書いた「メビウスの指輪」のつづき。組木屋の「メビウスの指輪」は、はめ方次第でいろいろな表情が楽しめますよ、として基本の5スタイルを紹介しましたが、今回は、その応用編。
それと、「実際に指にはめたところを見ないとイメージが湧きません」という、ごもっともな意見をいただきましたので、モデルさんにはめていただいた写真を載せていきます。(プロのモデルさんではありませんので、シワとか毛穴とか余分なお肉は見ないであげてください)

・メビウスの指輪、基本5スタイルのおさらい
まず、基本5スタイルで指にはめた状況の写真を。(別角度からも見えるように鏡の前で撮っています。)
使用する指輪は、パオロッサという樹種で、白太あり、やや太めのフォルムのもの。(最初期に作ったものなので、今見ると若干へたくそに感じられますが、クラフター上田さんの腕が少しは上がっている、と理解しましょう。)
S‐styleを指輪ゲージで測ると、およそ9号。←モデルさんの小指にほぼちょうどなサイズ。
以下、実際に指にはめた写真。基本スタイルではめて、くるくると回して(rollして)いきます。
①標準型「S-style」
②交差型(白)「X(W)-style」
③交差型(黒)「X(B)-style」
④蝶々型「B-style」
⑤無限型「Q-style」
基本5スタイルでいろいろ試すとこんな感じです。上記写真はすべて正面(Front)から指を入れていますが、逆(Rear)から指をいれると、木目がまた違った見え方になったりします。
・メビウスの指輪の各部位名称と記号について
基本スタイルだけでもかなりの数となって、区別が大変になります。
ここで、応用編を説明する前に、指輪の各部位や方向につけた名称と記号について説明します。
まずは、2本のリングを識別します。一方を白(White)として、もう一方を黒(Black)と呼びます。白太ありの作品だったら比較的区別しやすいのですが、そうでない作品でも何でもよいので目印(木目の特徴的な部分とか、キズとかでもよいので)をみつけて、一方を白、もう片方を黒と決めてしまいましょう。どうしても識別できない場合は、あっさり諦めていただいて、白と黒の区別はない、としていただいてよいです。
次に、座標軸(x y z)を左図のように設定します。この写真の状態を定位置(home position)として覚えておいてください。指輪が飛行機だとしたら、このままx軸の方向に飛んでいくようなイメージで、回転軸(roll pitch yaw)も設定。
x軸正の方向に見たものを正面(Front)、逆にx軸負方向に見た場合を背面(Rear)とします。
続いて、一方(白)のリングだけに注目して、指輪の方向45度毎に、右図のように名前をつけます。(名前の由来は、あまり気にしないでください)

①スタイル:基本5スタイル(S X(W) X(B) B Q)と、応用スタイルのヨーワンエイティ(yaw-180°)
②基準リング:2本のリングを識別して、白(White)と黒(Black)のどちらを基準とするか
③はめる方向:指輪をはめる方向。正面(Front)からか背面(Rear)からか
④見せる方向:指輪のどの方向(Top Charm Up Strange Bottom Strange' Down Charm')を、手の甲側にするか
⑤開閉:開く(open)か閉じる(close)か。(閉じて捩じらない場合は省略します)
⑥捻じり:捻じる(twist)か捩じらない(not twist)か。(捻じらない場合は省略します)
記号表記するとき、適当に省略する場合(「yaw-180°」は「y-π」と略します)や、頭文字1字だけを使用する場合があります。
・メビウスの指輪、応用スタイル編
ここでいよいよ、2本の指輪をそれぞれ、開いたり閉じたり、捩じったり、ひっくり返したり、という応用編の説明をします。応用編では、指輪の内径が小さくなるので、基本スタイルの説明で使った太めの指輪だと、肉が”むにゅっ”となって苦しい感じです。(太めの指輪だと、特に内径の変化が大きいです)

なので、指輪を大きめで細めのフォルムのものに変えて説明します。樹種はアフリカンブラックウッド。
S‐styleを指輪ゲージで測ると、およそ12.5号。←モデルさんの小指にはだいぶ緩めなサイズ。
ほとんど真っ黒な木なので、白・黒の区別、正面・背面の区別は無しとして、記号の②③は省略します。
①まず、この指輪で基本の「S・X・B-style」。写真で分かりにくいかもですが、けっこうゆるゆるです。
②「S-style_Up」から、開いたり捩じったり閉じたりします。指輪サイズが小さくなるので、抜くときは、基本スタイルに戻して抜いてください。
③「X-style_Up」から、開いたり捩じったり閉じたりします。
④「B-style_Up」から、開いたり捩じったり閉じたりします。