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  • 組木屋 上田

「○△□(まるさんかくしかく)」


今回は、「○△□(まるさんかくしかく)」という作品群を紹介いたします。

一個の木から制作(一木造り)している、不可能物体的なものたちです。

そのデザイン自体は、非常にシンプルなので、同じようなものを考えた人は多くいるだろうとは思いますが、制作が非常に面倒なので、誰も実際には作らなかったのではないか、と思います。

組木屋のクラフターさんの頭の中にも、ずっと以前から構想はあったものの、なかなか実行に移せませんでした。

「よっしゃ、作ってみよう!」となったきっかけは、「Naef社」から、楕円・長方形・三角形のフレームを連結したオブジェが限定販売されている、というニュースをたまたま見かけたことです。その作品の名前は「Formobile」、デザイナーはPeer Clahsen氏。

「Formobile」を見て、「おお!実際作った人がいたか」と思ったのですが、写真で見る限りでは、接着組み立てをしたものでした。

組木屋では、これを接着無しで、一木造りすることにチャレンジしてみました。

形は、(ほぼ)円・正方形・正三角形をねらって作りました。ペンダントトップとして使えるようにと思い、サイズはかなり小さめです。

※一木造り(いちぼくづくり):木彫り技法の一種。元々は仏像彫刻で、一本の木材から像の主要部全体を彫りだすものを呼ぶ。それに対して、複数の木を寄せ合わせて作るものを「寄木造り(よせぎづくり)」と呼びます。

三種類の「○△□(まるさんかくしかく)」

丸(○)と三角(△)と四角(□)のリングをつなげた作品、ということで、どんな作り方をしようかと、いろいろ考えて試してみました。他にもアイデアはあるのですが、とりあえず3種類の工法(「くさり」「ハーツ」「三つ巴」と呼んでいます。)で制作しましたので、それぞれ紹介します。

いずれの工法も「一木造り」です。

1.「くさり工法」

一塊(ひとかたまり)の木を削って作品(特に不可能っぽいものや不思議な感じのもの)を作ることを、ホイットリング(whittling)といいます。つなぎ目や接着した跡なんかが無い「くさり」とか「ペンチ」みたいなものを見て、「どうやって作ったんだろう?」とか思った経験がある人も多いのではないでしょうか。実は、その形をそのままちまちまと削り出す、という大変面倒な工程で作られているのですが、まずは、そのホイットリングでの「くさり」の作り方で、「まるさんかくしかく」を作ってみました。

ここで使用した材は、ケミカルウッドという人工合成材料。名前に「ウッド」とありますが、実は木ではありません。ウレタン系樹脂なんかで人工的に木材と性質を似せて作られた材料。NCルーターとかを使った機械加工で、試作品を作るのとかによく使われているらしいです。(組木屋でも一度加工してみたかったので、使ってみました。)木材と違って異方性がほとんどないので、3次元的に形を作るのが非常にやり易い材料です。

2.「ハーツ工法」

組木屋の枝葉さんデザインの作品で「ハーツ(4U)」というものがあるのですが、これの作り方を考えていた時に、ハート型以外にも応用できるな、と思っていて、ちょっと頑張って「まるさんかくしかく」を作ってみました。

左の写真はペアウッド、右はレッドハートという、どちらも天然の木材です。

2層重ねてくっつけているような形状ですが、接着しているのではなく、1個の木から作られています。

ハート型を2つ作るのに比べて、○△□3つのリングを作るのは、1.5倍どころではなく、もっとずっと手間がかかる上に難しくなるのですが、なんとか上手いこと作れました。

3.「三つ巴工法」

いよいよこれが本番。ぱっと見、「くさり工法」のものと同じように思われるかもしれませんが、リングの絡み方をよーく見てみてください。それぞれのリングが、他の2つのリング両方と絡んでいて、「三つ巴(みつどもえ)」の状態になっているのです。(対立しているわけではないので、「三位一体(さんみいったい)」といった方がよいのかな、とも思いましたが、いまいちしっくりとこない。「トポロジー」とか「結び目理論」とかでなら、なんか正しい呼び名があったりするのでしょうか。)

写真の左はケミカルウッド、右がレッドハート。

この○△□、3つのリングの関係が絶妙に不思議で、興味深い。指先でいじっているだけでも、動きが面白くて、なんか全然厭きません。(静止画ではなかなか伝わらないと思うので、いつか動画をアップしようかと思います。実際に触ってみていただくのが一番よいのですが。) ←作品紹介のページの方に動画を貼ってみました。

木工を趣味とされている方で、「くさり工法」のものを作ったことがある人はいるかも、と思いますが、この「三つ巴工法」のものを「一木造り」で作ったことがある人は、たぶんいないのではないでしょうか。(世の中広いので、やっぱりどこかにいるかもしれませんが。)

組木屋のクラフターさん(私自身のことですが、)は、脳みそ沸騰しそうになりながら作り方を考えて、途中何度も発狂しそうになりながら制作実施したそうです。(明らかに修行不足です。)もう一個作ろうか、という気力は、当分湧いてきそうにありません。。。(悟りの境地には程遠い。。。)

○△□(まるさんかくしかく)の意味

江戸時代、仙厓義梵(せんがいぎぼん)という禅僧が描いた「○△□」の禅画があります。「書」と呼ぶべきか「絵」と呼ぶべきか分かりませんが、不思議な魅力のある作品だと思います。

「禅」において「○△□」には深い「問い」が込められており、その解釈には無数の説があるらしいです。「宇宙(の真理)」を表しているとか、「森羅万象」を表しているとか、「三つの宗教(仏教・儒教・神道)」を表しているとか、「水・火・地」を表しているとか、「禅における悟り」を表しているとか。。。

私自身、なんの答えも解釈も持ち合わせておりませんが、もしも私が禅僧だったら、三つ巴の○△□をこつこつと彫りながら修行をして、なにかしらの答えを探したのでしょうか。。。

(個人的には「○△□」を、「まーるさんかくしかーくー」と、長音符を入れて読んでしまいます。これでメロディーが浮かんで来たら、同世代かもしれません。)

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