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組木屋 上田

「K3」の形状と「K3短長比(β)」という値について

前回、組木屋たいる「K3シリーズ」について大まかに説明した。

ここでは、「K3」の形状を説明するとともに、組木屋で勝手に置いた記号「K3短長比(β)」という値について説明していく。

「K3」の形状(角度と寸法)を上図に示す。


まず角度について。

他のペンローズタイルの仲間はたいてい36°の倍数で構成された多角形だが、「K3」には90˚、126˚といった角度があり、半分の18˚の倍数にはなっているが36°の倍数ではない。(90˚のタイルを使って五回対称な平面充填ができる、というのがけっこう意外な感じがした。)


次に辺の寸法について。

「K3」のプロトタイルの辺寸法は2種類あり、短い辺を「1」とすると、長い辺は「1.90211303…」という値(無理数)になる。とても中途半端な値なので、組木屋ではこの値を記号「β(ベータ)」と置き、「K3短長比」と呼ぶことにした。「K3における短辺に対する長辺の比」という意味である。

「黄金比(φ)」を使うと「β=√(φ+2)」と表すことができる。または、三角関数を使うと「β=2sin(72˚)」もしくは「β=2cos(18˚)」と表せる。(←これらの関係を求めるのにかなりの苦戦を強いられた。)


はじめは「K3」の形状を説明するために仕方なしに置いた、この「K3短長比(β)」という記号が、実はなかなかに便利で、興味深い数値であることに気が付いた。


正五角形の寸法を考えるとき、対角線を引くとあちらこちらに「黄金比(φ)」が現れてすっきりと表せることは有名だと思うが、高さや、内接円・外接円の半径などを求めようとすると、平方根(√)もしくは三角関数(sin,cos)を使ってかなりややこしい値となってしまう。ところが、「K3短長比(β)」を使うと平方根も三角関数も使わずに、いろいろな寸法がすっきりと表せる。

1辺の長さが「1」の正五角形を考える。(「K3」の大きい正五角形を1/β倍したもの。)

「K3短長比(β)」を使うと、正五角形の高さ、内接円・外接円の半径は、図示のように、平方根や三角関数を使わずに表すことができる。


また、「K3短長比(β)」を使ってペンローズタイル「P2」「P3」「ロビンソンの三角形」の寸法を表すと下の図のようになる。

さらに、「P1」と「P3」の変換を考えるときにも「β」という値が活躍する。

上図では『「P3」:「P1」= φ:β 』の変換を示しているが、一般的に『「P3」:「P1」= φ^S:β (Sは整数)』という変換が可能。



以上、「K3短長比(β)」について、それがなかなかに興味深い数値である、ということの説明でした。

ひょっとしたら、もっと面白い性質があるかもしれないので、もし発見された方は組木屋までお知らせ頂けると幸いです。


次は、「マッチングルール」について、いろいろと考えたことを説明する記事を書こうかと思います。



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・「組木屋たいる」のまとめページ

・周期充填と非周期充填と強非周期充填

・マッチングルールとは

・膨張と収縮(細分割)と置換ルール

・MLDと変換ルール

・3種類の充填形「表」と「裏」と「輪」

・置換および変換のサイズ「S」と「世代」

・1方向並進周期充填(帯充填)という概念

 などを順次書いていくつもり。


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