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  • 組木屋 上田

組木屋たいる K3シリーズ

前回までに「ペンローズタイル」と「その仲間たち」について、「強非周期充填」「マッチングルール」「膨張収縮(置換ルール)」「MLD(変換ルール)」などの概念をざっと説明してきた。

ここから、組木屋で考案した「強非周期充填プロトタイルセット」である「K3シリーズ」を紹介していく。

「K3シリーズ」としては、

・「K3(槍と潰れた五角形と大きい正五角形)」

・「K3’(ヒヨコとハトとヒトデ)」

・「K3”(カクカクヒヨコとカクカクハトとカクカクヒトデ)」

の3種類を考えたのだが、まずは、一番シンプルな形の「K3」から説明する。

上記の3種類のタイル、「槍」「潰れた五角形」「大きい正五角形」からなる「強非周期プロトタイルセット」である。ラインと矢印は「マッチングルール」を示しており、ラインがつながるようにだけ、矢印は方向も合わせて繋がるようにだけ、タイルを接合できる。このルールを守っている限り、非周期充填はできるが周期充填はできない「強非周期充填」となる。

「マッチングルール」の表し方はこの他にもたくさんあり、10種類くらい考えたのだが、詳しくは後述する。


「ペンローズタイル」などのところで説明したのと同様に、「K3」も「膨張収縮」の「置換ルール」を示すことができる。中央のプロトタイルセットを並べて右の大きなサイズのタイル(橙色)を得ることを「膨張」、逆にタイルの内部を分割して左の小さなタイル(緑色)を得ることを「収縮」もしくは「細分割」という。ここで、図では「マッチングルール」の表記を省略しているが、置換後のタイルでもルールが守られていることが重要。これにより「非周期的に無限に平面を充填できる」ことが示される。


次に「K3’(ヒヨコとハトとヒトデ)」の紹介。

「K3’」は「ヒヨコ」と「ハト」と「ヒトデ」と呼んでいる3種類のタイルからなる「強非周期プロトタイルセット」である。ラインや矢印を設定しなくても、形状がそのまま「マッチングルール」を示しており、隙間なく並べれば強制的に非周期充填となる。


「K3’(ヒヨコとハトとヒトデ)」の「膨張収縮(置換ルール)」を図示する。「膨張」の操作も「収縮」の操作も、無限に繰り返すことができるので、「非周期的に無限に平面充填できる」ことが言える。

図では、φの2乗倍の「置換ルール」を示しているが、φ倍で「置換」することも可能。ただし、形が全然変わってしまって「ヒヨコ」とか「ハト」っぽくなくなるので、「φの2乗倍」のものだけを第一世代、第二世代…と数えることにしている。


「K3”(カクカクヒヨコとか)」も同様に「充填形」や「置換ルール」を示すことができるが、とりあえすそれは省略して形状(角度)だけ比較したものを示す。

「K3シリーズ」はいろいろと共通の性質を持つが、微妙に違うところもあってそれが面白い。

「K3」はそれぞれのタイルの形状が鏡映対称(左右対称)なのだが、「K3’」と「K3”」は鏡映対称ではないので、裏返すと別の形となる。図示のものを「左系」、裏返したものを「右系」と呼んでいる。

また「K3’(ヒヨコとか)」は形状のみで「マッチングルール」を示しており、裏返しの「左系」と「右系」を混ぜては平面充填することができない。しかし「K3”(カクカク)」は、「マッチングルール」を規定せず、裏返しを許すと「周期充填」をすることができる。その例を下図に示す。

したがって、「K3”(カクカク)」を「強非周期充填」とするためには、「裏返し不可」とするか、別途マッチングルールを設ける必要がある。

「K3’(ヒヨコとか)」で同じように充填をしようとすると、わずかな重なりや隙間が出来てしまい、周期充填することはできない。

このわずかな違いもパズル的には面白いのだけど、「こまかすぎて伝わらない」面白さかもしれない。



「K3シリーズ」は「K3”」→「K3’」→「K3」の順番で考案した。

どのようにしてこの形が生まれたかを下図で簡単に説明する。

「ペンローズタイルP1」と「K2(凸凹ペンタ)」について比較検討していたときに、「P1」の充填形が3種類のタイルに分割できそうだな、ということに気が付いて「K3”(カクカクヒヨコたち)」が生まれた。これは上図のように「P1」の正五角形の中心点を結んだ形となっている。(白線)

このカクカクの図形を滑らかにしたいと思い、2種類の半径の円弧で連続してつないだものが「K3’(ヒヨコたち)」(黄・水色・緑線)

さらにこれらを、出来る限りシンプルな図形にするとしたら、と考えて生まれたのが「K3」(ピンク線)となる。


このころ「ペンローズタイルの仲間たち」についてあまり知識がなかったので、だいぶ後になって気が付いたことなのだが、「K3」と「SIH」とでは「1:1で一意に変換可能」であることが分かった。

後から思うと、「P1」→「K2シリーズいろいろ」→「K3”」→「K3’」→「K3」という考案の道筋より、「SIH」→「P3」→「K3」の方がずっと簡単だったな、と思う。

だが「SIH」を知らなかったからこそ、「K3シリーズ」で遊んでいていろいろな概念について自力で考えることが出来た、ということもあるので、結果よかったと思っている。


・「K3」で遊んでいて学んだこと発見したこといろいろ

「K3シリーズ」が、組木屋で最初に考案した「強非周期充填」となるプロトタイルセットで、これで遊びながらいろいろな概念を学んだり、考案したり、発見したりした。それぞれ説明すると長くなるので、順次別の記事として書いていこうと思う。


・周期充填と非周期充填と強非周期充填

・マッチングルールとは

・膨張と収縮(細分割)と置換ルール

・MLDと変換ルール

・3種類の充填形「表」と「裏」と「輪」

・置換および変換のサイズ「S」と「世代」

・1方向並進周期充填(帯充填)という概念

 などを順次書いていくつもり。



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