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  • 組木屋 上田

パロサント


銘木図鑑の第1回。リグナムバイタと似ているけど、より個性的な材、パロサントを紹介します。

「クセが強くてめっちゃ加工しにくい、超個性的な緑色の木」

パロサント

【別名】「聖なる木」・緑檀(リョクタン)・癒瘡木(ユソウボク)・グアヤック・リグナムバイタ

【科目】ハマビシ科 ブルネシア属 広葉樹

【組木屋作品】メビウスの指輪、がらがらの木、蝶々のペンダントトップ、ハーツ(4U)など

パロサント評価

【評価】組木屋で加工した材は、独自の基準で評価をつけています。(作品の値段決めに使っています)

パロサントは私が大好きな木で、総合評価8.6点(10点満点中)

パロサント(Palo santo)というのは、スペイン語で「聖なる木」を意味する。(palo が木とか棒とか、santo は聖なるとか聖者とかいった意味)

「世界一重い木材」として有名なリグナムバイタとともに、緑檀(リョクタン)と呼ばれていたりもする。(特に数珠・念珠の素材として使われているものが。)

パロサントとリグナムバイタとでは、見た目も性質もよく似ていて、区別されずに販売されていることがある。(パロサントとリグナムバイタの区別については、下の方【その他】で、もうちょっと詳述します。)

全く別の、カンラン科の木にもパロサントと呼ばれるものがあって、こちらは木材としてよりは香木として扱われる。見た目も材質も全然違うのですが、アロマとかパワーストーンなんかを扱っているお店のWEBページでは、しばしば混同されているようです。

パロサント 別種

写真左がハマビシ科のパロサント。右がカンラン科のパロサント(別名ホーリーウッド)。一度でも両方の実物を見たことがあれば、混同することはあり得ないだろう、ってぐらい全然違う。

【色・匂・味】木材として非常に珍しい緑がかった色。(他に緑色の材は、同じハマビシ科のリグナムバイタ。だいぶ色合いは違うがホウ(朴)の心材が多少緑がかっているものがある。あと青黒檀は加工直後は緑がかった色の木目が見えるが、時間がたつと真っ黒になる。)

心材は、緑、茶、黄土色などが複雑に絡んだ色。白太部分は、肌色と黄土色。

しかも、色の個体差が大きく、かなり濃い深緑のものから、けっこう明るい緑のものまで色々。

パロサント 指輪 色

写真の指輪は、ぜんぶ同じ材から木取りしたもの(共木という)。それでもかなり色合いが違うでしょ。

加工直後は黄土色が強いが、次第に緑色に変色していく。リグナムバイタも同じ性質があるが、パロサントの方がより色の変化が早くて大きい。(他には、ムラサキタガヤサン、レッドハートなんかが、色の変化が大きい。)パロサントとリグナムバイタの場合、日の光に充てると色の変化が速いので、恐らく紫外線の影響が大きいのではないか、と思われる。

また別の材から作った指輪。左は加工直後、右は日光に当てておいたもの。

長期間、光に当たらないようにしていると、また緑味が弱くなる。不思議。

写真は長期間光の当たらないところに置いておいた材を、重ねて半日ぐらい日向に置いておいたもの。重なっていた(日が当たっていない)部分と、日が当たっていた部分との色がこんなに違う。

繊維方向があっちこっち向いていて(交錯木理)、板目もしくは追柾の面で矢はず模様がでる(繊維が交互に斜めって矢印みたいになる)ことが多い。柾目方向から見るとリボン杢みたいになる。

パロサントで、ハーツ(4U)という作品を作ってみたら、奇跡的に不思議な模様(木理)がうまれました!何が不思議か、繊維方向の縞々①~④をよーく見てみてください。考えれば考えるほど、あり得ない木理に思えないでしょうか?(1つの木から削り出しているので、別々の材を接着したりはしていません。)

「矢はず模様」の3次元的な関係と、ハーツ(4U)という作品の形状の妙とがあいまった奇跡だと思います。

匂いは、独特な甘い感じの良い香りがする。なんだかご利益とかありそうな有難い感じで、個人的にはけっこう好きです。そんなに似ているわけではないのだが、白檀の香りとなにかしら共通するものを感じる。リグナムバイタも同じような種類の匂いだが、パロサントの方がより強く香る。加工時には特に強く匂うが、そのうち弱くなる。それでも匂いに敏感な人であれば、加工後かなり時間がたったものでも匂いを感じると思う。

特に味はなし。

【加工性】組木屋で加工した材では、リグナムバイタよりは1~2段階ぐらい軟らかく感じた。

パロサントよりももっと硬い材はいろいろあるのだが、樹脂が湧くという特殊な性質があり、クセやムラがめっちゃ強いため、総合的な加工難度はMAXの10点。

油分が多く、木屑はモソモソしている。リグナムバイタよりもさらに油分が多く、樹脂の融点が低いのだと思う。電動工具での切削で熱を加えると樹脂が湧き出てくるが、(これはリグナムバイタでも起きる)それほど熱を加えない、ヤスリ掛けの作業でも、木屑にダマができて固まることがある。

木屑の色も、光によって変化する。 材の中の方(変色していない部分)を削ったものは、きな粉みたいな色だが、光に当てておくと抹茶オレの粉みたいな色になる。

パロサント 木屑

木屑を密閉できるポリ袋に入れておいた。左はあまり光に当たらないようにしたもので、右は1日、日光に当てたもの。

硬さのムラがやたらと大きくて、糸鋸盤で切断をするときにノッキング(なかなか進まなかった刃が、突然ガクッと進む感じ)がよく起きる。樹脂と木屑とが鋸刃の目に詰まりやすい。切断済みの部分に樹脂+木屑が詰まり、冷え固まると、前にも後ろにも進めない、刃を抜くこともできない、という泣きそうな状況が発生することもある。アクリル樹脂を糸鋸盤で加工したときの困難さに似ている。

見た目ではどこが硬いのか軟らかいのか予測がつかないので、ビット研削で精度を出すことも困難。白太部分もかなり硬いので作品に使えるのだが、心材部分以上にクセ・ムラが大きくて困ったもんです。

繊維方向による硬さの差(ミニルーターで削れる速さの差)は、平均すると2~3倍程度かと思うが、場所によっては5~10倍くらいも硬い部分があったりする。ドリルによる穴あけでは、軟らかい方向へ刃が持っていかれる。φ1.5㎜の刃でも結構たわむ。それより細いドリルでは刃が折れる危険が高いのでかなりの注意が必要。

トリマーでテンプレートを使用した加工では(めったにやらないのだが、)意外とやり易かった。

たぶん、機械加工では十分な剛性と馬力があれば、熱が入りすぎないようにさえ気を付ければ、特に問題はないように思われる。

樹脂が湧くとか、硬さの予測がつかないとか、わけのわからない特徴がいっぱいあって、手作業で精度を出すことがめっちゃ難しいのですが、加工していてぜんぜん厭きない。厭きさせてもらえない。この予測のつかない変な難しさが、かなり楽しい。

【仕上】メビウスの指輪の場合、#1000ぐらいまでヤスリかけしてます。仕上面は蝋(ロウ)みたいな手触りで、しっとりした感じになる。

上から、柾目・板目・木口方向で木取りしたもの。(共木)

左は普通のデジカメで出来るだけ近寄って撮った写真。中央と右のは、デジタルマイクロスコープでさらに寄って撮った写真。右の写真の右側にはクラックスケールの0.08mm、0.10mm、0.15mmの線を当てています。(デジタルマイクロスコープの写真はバックの色とのバランスで勝手に色補正をしてくれているため、あまり緑色に見えなくなってしまった。)

パロサント 指輪 個体差

各個体毎の色合いの違いも大きいが、木取り方向によっても見た目がかなり違う。道管の太さは、0.10mmから0.15mmぐらいな感じだが、樹脂が詰まっているのでほとんど穴にはなっていない。

たぶん、まれにだと思うが、木口側の切断面から白い結晶?(カビ?)のようなものが湧いてくることがある。(布とか指でこするぐらいで簡単に取れます。)

花梨やパドウクでも似たような現象が起こることがあるが、それは、サポニン(saponin)という成分が湧いてくるものらしい。パロサントで湧いてくるものも、同じサポニンなのかどうかは分かりません。私がネットでちょこちょこっと調べた限りでは、パロサントでこの現象が起こったという報告は見つからないので、たぶんめずらしいことだろうと思う。

上の写真は、パロサントの猫の箸置きに湧いてきた白いもの。拡大すると、なにやら刺々した結晶みたいな感じ?。

下の写真は、パドウクの指輪に湧いてきた白いもの(サポニン)。パロサントのものより細くて綿みたいにふわふわした感じ。

【その他】パロサントは、とにかく個性的な木材。リグナムバイタも同じような材質なのですが、パロサントの方がよりクセが強く、匂いも強く、色の変化も大きい。めっちゃ加工しにくいのですが、私にはお気に入りです。

現在はリグナムバイタもパロサントも、ともにワシントン条約の附属書Ⅱに記載されているので、輸出入には許可が必要。そのため実際に輸入販売をされている業者さんでは樹種(学名)まで正確に把握されていると思います。しかし、昔輸入された材や、転売をされているものでは、現在でも混同されて流通しているものが多くあるよう。

リグナムバイタとパロサント

組木屋で入手したリグナムバイタとパロサントの写真。どれがリグナムバイタでどれがパロサントか、この写真で区別できる人はたぶんいないだろうと思います。私は実物を見ても区別する自信がありません。(見た目だけでは無理ですが、加工をすれば識別できるようになった、と思っています。たぶん。。。)

ちょっと昔の資料(1997年発行「カラーで見る世界の木材200種」)とかでは、リグナムバイタとパロサントとは区別されておらず、リグナムバイタの項で別名としてPalo santoという記述があったりします。

もうちょっと最近の資料(2014年発行「【原色】木材加工面がわかる樹種辞典」)では別種として紹介されていて、「最近、リグナムバイタとして流通している材はパロサントが多い」と記述されていました。

組木屋で初めに入手した材は、大阪の銘木店で「リグナムバイタ」として売られていたもので、それを加工して書いたこの記事も、元々はリグナムバイタの紹介として書いたのですが。。。

その後、リグナムバイタとパロサントとを区別して販売されているとこ