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  • 組木屋 上田

スネークウッド


銘木図鑑の第18回。最上級に重硬で高価な木材、「スネークウッド」を紹介します。

「見た目に騙されてはいけない。その材質こそ最上級のエリート木材」

スネークウッド

【別名】レパードウッド・レターウッド

【科目】クワ科 ピラチネラ属 広葉樹

【組木屋作品】メビウスの指輪、ハーツ(4U)、お箸、など

スネークウッド評価

【評価】見た目が非常に個性的だが、その材質こそが王道を行く超優良材。お値段も最上級。

普通に木材として流通しているものでは、このスネークウッドか、デザートアイアンウッドが最も高価かと思います。

心材部分の柄(がら)は、色合いは全然違うけど模様としてはヒョウ柄に似ているものもあって、レパードウッドとも呼ばれる。(ヒョウの英語のつづり(Leopard)からは「レオパード」となりそうだけど、「o」は発音しないらしい。)

文字がモヤモヤっと書かれている感じに見えたものもあったのか、レターウッドとも。

蛇の柄にこんなのありそう、となってスネークウッドって感じでしょうか。

組木屋で入手した材でも、これはかなり蛇っぽいかも、というものがありました。

スネークウッド 蛇柄

こんな色と柄の蛇がほんとにいないかな、と思っていろいろ検索してみましたが、実際にはいそうでいないようで、見つかりませんでした。

柄の出方には個体差が大きいようで、ほとんど蛇柄模様のないものもあります。いかにもヘビっぽい、あるいはヒョウっぽい模様の出たものが特にお値段が高くなるようです。

こんな独特な模様を持つスネークウッドですが、お値段が高い理由はそれだけではなく、希少であることと、そして何より材質が非常に優れていることによります。硬くて、重くて、目が詰まっていて、磨くと光沢も出て、耐久性も高くて、水にもかなり強い、すんばらしい木材です。

私自身、自分で加工する前は、「うわ、高っか。ヘビ柄がそんなによいか?」みたいに思ってしまっていましたが、反省することしきり。

まあ、ヘビ柄は好みも分かれるだろうし、硬さの割に意外と細かな加工はし易いし、といったことをいろいろ加味して、組木屋評価としては9.2点としました。

【色・匂・味】赤身がかった茶色に、焦げ茶色のまだら模様。白太と心材の境は明瞭で、白太部分は割と普通の薄茶色。白太ありの材は、めったに見かけないので、かなり希少だと思う。わざわざ白太部分を使おうとする人がいないだけかもしれませんが。

スネークウッド 白太

常温では全然匂いは感じない。かなり熱を加えると、香ばしくて良い匂いがする。珈琲の種類でこんなのがありそうな、なさそうな、あったらけっこう美味しそうかも、という感じの匂い。

味は特にしない。

【加工性】めっちゃくちゃ硬い。デザートアイアンウッドにも匹敵する、最高レベルの硬さ。

標準的な硬さの銘木材(ウォルナットとか)の10倍くらい時間をかけて加工する覚悟が必要。

糸鋸盤では、非常にゆっくりとではあるが綺麗に切れる。ピンクアイボリーみたいに特別焦げやすいわけでもなく、パロサントみたいに樹脂が湧いてくるわけでもないので。でも、刃を鈍らせるのが早く、ほんの2~3cm進んだだけでも切れ味が落ちるのが分かるほど。数cm毎に、新品の刃に替えるわけにもいかないので、ある程度切れ味の悪い状態で、それなりになんとかして切断する必要がある。

硬くて刃がなかなか進まないので、電動工具で加工するとき、否が応でも熱が加わってしまうのだが、熱には弱いらしい。十分に乾燥した材でも、ごく薄く挽こうとすると反る。たぶん、熱が加わった面が冷めるときに縮むためだと思われる。

スネークウッド 反り

厚さ3mmぐらいの左の材では大丈夫だったのだが、1.5mmぐらいに挽いた右の材は反ってしまった。

硬いのでそう簡単には割れないが、割れるときは「メキメキ…」とはならず、「パキッ」と割れる。粘りがほとんどない。

ミニルーターの粗いビットでの切削では、若干の逆目を感じる。繊維の強さもそこそこ感じてキックバックに注意が必要。

とにかく硬くて、切削は非常にゆっくりとしか進まない。だけど、変なクセやムラがほとんどなく、ちまちまと削っていく分には、かなりやり易くて精度も出しやすいので、加工難度としては8とした。

【仕上】めっちゃゆっくりとしか削れないのだが、ヤスリはちゃんと利く。心材は道管が全然見えないぐらい綺麗に仕上がる。光沢も出て高級感がある。実際、超高級材ですし。

上の段は、メビウスの指輪、白太なし。下の段は、ハーツ(4U)、白太あり。左は普通のデジカメで出来るだけ近寄って撮った写真。中央と右のは、デジタルマイクロスコープでさらに寄って撮った写真。右上の写真の右側中央にはクラックスケールの0.06mmの線を、右下の写真には0.08mmの線を当てています。

心材部分を拡大してみると、0.06mmぐらいの粒々が見えるので、たぶんこれが道管だと思うのですが。

白太部分では0.10mm~0.20mmぐらいの筋が見られるが、この筋にも樹脂が詰まっているのか、穴にはなっていないよう。これは道管ではないのかも。

スネークウッド 箸

子供用にスネークウッドでお箸を作ってみて感じたのだが、無塗装の状態でも水に強い。1年ぐらい普通に洗剤でゴシゴシ洗って使ってもぜんぜん良い感じ。(やつらが噛むので、箸先は表面が若干粗くなった感じはありますが。)お箸の材料としては、青黒檀が最高級とされているようだが、スネークウッドも同等か、さらにその上をいっているようにも感じる。(でも熱にはあまり強くないらしいので、食洗機には入れない方がよいかもしれません。)

【その他】スネークウッドの用途としては、デザートアイアンウッドと同じように、ペンブランクやナイフグリップのような、趣味のための高級材として使われる。その他、ビリヤードのキューだったり、楽器のパーツだったり。最も高級だと思われるものとして、一本の木から作られたステッキだと7桁のお値段がついていたりします。

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