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  • 組木屋 上田

ビャクダン(白檀)(インド産、オーストラリア産、他)


銘木図鑑の第16回。今回は、香りのする木「ビャクダン(白檀)」の紹介。

「香木として取引される超高級品。あえて木材として評価してみました」

ビャクダン(白檀)

【別名】サンダルウッド(「産地+サンダルウッド」という呼び方もされる。インディアンサンダルウッド・オーストラリアンサンダルウッド・アフリカンサンダルウッド、など)

【科目】ビャクダン科 ビャクダン属(アフリカンサンダルウッドはオシリス属) 広葉樹

【組木屋作品】メビウスの指輪、猫のキーホルダーなど

【ビャクダン(白檀)とは】「コクタン(黒檀)」という呼称と同じように、「ビャクダン(白檀)」も特定の1種を指すのではなく、ビャクダン科の複数の種を指す総称的な言葉として使われている。

香木(こうぼく)として特に香りが良く高値で取引されるのは、インド産のインディアンサンダルウッド(学名:Santalum album)ですが、インド政府による伐採制限・輸出規制もあり大変希少。そこで近年はオーストラリア産のオーストラリアンサンダルウッド(学名:Santalum spicatum)が代替品として増えてきているらしいです。香木として取り扱われているのは主にこの2種のようですが、同じ種でも産地によって香りがかなり違うらしい。

これらとは別のオシリス属のアフリカンサンダルウッド(学名:Osyris lanceolata)の一部地域の個体群は、ワシントン条約の附属書Ⅱに記載されています。(参照:ワシントン条約附属書(植物界)平成29年10月4日から発効)

ビャクダン(白檀)(インド産、オーストラリア産、他)

組木屋では、インド産(写真左)と産地不明の高級白檀(写真中央の2つ)とオーストラリア産(写真右)の小さな材を入手して加工してみました。個人で材を入手するときに学名まで確認できることはほとんどないので、正確なところはよくわかりませんが。

ビャクダン(白檀)評価

【評価】一般的には木材としてではなく、香木として取引されることがほとんどで、非常に高価。

オーストラリア産でも十分に希少で高価なのだが、インド産はさらに超高価で、組木屋での材料価格評価10を飛び越えてしまう。良質なものは、細かく砕いたチップの状態で、1グラム100円くらいのお値段がついていたりします。材として使えるような塊だと、さらにその数倍のお値段になっていたりもする。

材料が比較的豊富だったころは、日本でも仏像などの彫刻に好んで使われていたらしく、仏師の方が材を備蓄していたりするらしい。インドではヒンズー教の神様の彫刻とかで、非常に細かな細工が施されていたりする。

木材としては、まずまずの硬さで欠けたりもしにくく細かな加工がしやすい。丁寧に磨けば木肌も綺麗に仕上がる。でも、色は平凡な薄茶色で木目にもあまり特徴はない。で、値段は超高価。組木屋評価グラフは、かなり偏った形になりました。

【色・匂・味】白檀と呼ばれてはいるが、そんなに白くない。肌色っぽいのから黄褐色、茶色まで、色幅が大きい。加工時には結構白っぽいと思った材でも、表面を磨くと色は濃く見えてくる。

木目に関して、オーストラリア産のものは年輪が割とはっきりしているが、インド産のものはあまりはっきりとせず薄っすらと見えるという程度。

経年変化で表面の色が濃くなる傾向があるよう。比較的色が濃いと思っていた古いインド産材が、加工してみたら一番明るい肌色だったりした。

木口面だけ見た目の色合いが違って見える。素材の色ではなく、光の反射の加減なのだろうが、オーストラリア産に関しては、灰色っぽくくすんで見えてしまうのが残念。

ビャクダン(白檀)(インド産、オーストラリア産、他)見た目

匂いは、他に似たような匂いを知らないので、まさに白檀の香りとしかいえない。

白檀はお線香の素材としてよく使われているが、私の記憶にある線香の匂いと、今回組木屋で加工した材とでは、けっこう違った印象だった。(だったらなんで本当の白檀の香りだと分かるのか、というと、以前に大阪市立科学館で白檀の香りの展示があったので、そこでしつこいくらい匂いを嗅いで覚えました。)

組木屋で入手したものでは、インド産は香りが強く、材のままでも結構香る。産地不明の材が科学館で嗅いだ匂いと一番よく似ていた。オーストラリア産も同系統の匂いがするが、ずっと弱い。加工中の匂いは、カントリーマアム(レモンチーズケーキ味)のような甘い爽やかな感じがした。

味は、微かに苦く感じたような気もするけど、ほとんど無味。

【加工性】硬さは、組木屋で基準としているウォルナットよりは若干硬いと感じた。オーストラリア産よりインド産と産地不明材とが、さらにもう一段硬かった。

年輪幅はけっこうバラバラで、晩材が密な部分が特に硬くなる。また、年輪と関係なく色の濃い部分が硬い傾向がある、というか、硬い部分は研削時に濃い色に見える。繊維方向による硬さの差は2~3倍程度で、結構個体差が大きい。

ルータービットでの研削では、硬さのムラが大きいように感じるが、ドリルでの穴あけはとても素直にやり易く、ぶれることが少ない。

逆目で多少毛羽立つが、繊維の強さはあまり感じない。

組木屋では、鑿(ノミ)や彫刻刀での加工はほとんどしないのですが、きっと彫刻をしやすい材質なんだろうな、と感じる。

木屑はさらっさら。材自体より木屑の方が色が薄く見える。木屑を捨てずにとっておこうとして気が付いたのだが、加工方法によって木屑の色合いが違って、細かい木屑ほど白っぽく見えたりする。

ビャクダン(白檀)色合い

【仕上】メビウスの指輪は#1500まで磨いた。木肌は非常に綺麗になり光沢も出る。

硬さのムラがそこそこ大きいため、均一にヤスリをかけてしまうと、形は歪んでいく。硬い部分には強く多く、そうでない部分には弱く少なく、ヤスリを当てる必要がある。これがかなり難しい。

上から、インド産・産地不明高級材・オーストラリア産。インド産材の色の濃い部分には節(しかも死節)があったので、低粘度の接着剤を流し込んで固めています。

左は普通のデジカメで出来るだけ寄って撮った、肉眼での見え方に近い写真。中央と右のは、デジタルマイクロスコープでさらに寄って撮った写真。右の写真の下にはクラックスケールの0.06mm、0.08mm、0.10mmの線を当てています。

道管の太さは、0.06mmかそれよりも細いくらいで、肉眼ではほとんど識別できない。

丁寧に磨いたものは、木口側が灰色がかったように見えてくる(オーストラリア産のものが特に顕著)。

【その他】木材として考えると、そのお値段とは割に合わないなぁ、という感じ。

木材としても平均以上に魅力的なものなのですが、香木としてだと桁違いに高価になってしまうので。。。

上の方にも書きましたが、白檀とはビャクダン科の複数の種を指す総称的な言葉として使われています。それを知らずに、白檀といったら良い香りのする木のこと(だけ)だ、と思っていたら痛い目に遭うことがあるかもしれません。

組木屋では上記の他にもカンボジア産白檀と称する材を、ネットオークションでそこそこなお値段で入手したのですが、ビャクダンらしい香りは全然まったくしなくて、やっちまったぁ、という経験があります。ただ単に木材としてだったら、ここまでの金額は出さなかったのに、、、みたいな。

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