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  • 組木屋 上田

リグナムバイタ


銘木図鑑の第17回。世界一重い木材として有名な、「リグナムバイタ」を紹介します。

「世界一重い!個性的な緑色の木」

【別名】「生命の木」・緑檀(リョクタン)・アイアンウッド・癒瘡木(ユソウボク)

【科目】ハマビシ科 ユソウボク属 広葉樹

【組木屋作品】メビウスの指輪、ハーツ(4U)、猫のキーホルダー、など

【評価】材として流通している木の中では、「世界一重い」と言われていて、あっさりと水に沈む。硬さもかなりのもの。

リグナムバイタ(Lignum vitae)というのは、ラテン語で「生命の木」を意味する。(Lignumが木材、vitaeは命とか生活とかいう意味らしい。)その名前から縁起の良い木として扱われていたりもする。

熱が加わると樹脂が湧いてくるという性質があり、昔はベアリングのような特殊な用途につかわれていたそうな。

樹液は薬として使われることもあり、癒瘡木(ユソウボク)とも呼ばれる。

仏壇仏具業界では、同じハマビシ科のパロサントとともに緑檀(リョクタン)と呼ばれていたりもする。(特に数珠・念珠の素材として使われているものが。)

パロサントと見た目も性質もよく似ていて、木材屋さんでは区別せずにどちらも「リグナムバイタ」として流通していることがあるようです。両方を区別して販売している輸入木材店では、リグナムバイタの方が若干高いお値段がついているが、それほど大きな差ではない。

組木屋評価としては、パロサントよりちょっとだけ高い8.8点としました。

【色・匂・味】木材として非常に珍しい緑がかった色。同じハマビシ科のパロサントが似たような色をしている。

緑、茶、黄土色などが複雑に絡んだ色。加工直後は黄土色が強いが、明るいところに置いておくと次第に濃い緑色に変色していく。屋内の蛍光灯の明かりでも変化するが、日の光に充てると色の変化が速いので、恐らく紫外線の影響が大きいのではないか、と思われる。(密閉できるポリ袋に入れていても、明るいところでは色が変化していくので、酸化が要因ではないと思う。)

長期間、光に当たらないようにしていると、また緑味が弱くなる。不思議。

写真左の指輪は、加工後に光の当たらないところに置いておいたもの。右は3日ほど日光に当たる場所に置いておいたもの。

色の濃さは平均するとパロサントよりリグナムバイタの方が濃い傾向があるよう。でもそれよりも個体差やどの程度変色した状態なのか、ということによる色のバラつきの方がずっと大きいので、色だけで識別することは難しい。パロサントの方が特に色のバラつきが大きく、変色するもの早くて顕著。

パロサントと同様に、繊維方向があっちこっち向いていて(交錯木理)、板目もしくは追柾の面で矢はず模様がでる(繊維が交互に斜めって矢印みたいになる)ことが多い。柾目方向から見るとリボン杢みたいになる。

常温ではあまり匂わないが、かなり熱を加えると、独特な甘くて良い香りがする。そんなに似ているわけではないのだが、白檀の香りとなにかしら共通するものを感じる。なんだかご利益とかありそうな有難い薫り。リグナムバイタとパロサントは、よく似た系統の匂いではあるが、パロサントの方は常温でも匂うし、より強く香る。

木屑をなめても、味は特にしない。

【加工性】相当硬いけど、組木屋の硬さ評価ではMAXの10点ではなく9点とした。(デザートアイアンウッドやアフリカンブラックウッドなんかが10点。)

ビット研削ではめっちゃ硬くて、硬さ評価10にしてもよいぐらいだが、常温での、鋸やドリル加工ではMAXの硬さではないかなと。ただし、熱が加わると樹脂が湧いてきて、木屑が刃に絡みついて全然進まなくなるという、泣きそうになるくらいの困難がある。なので加工難度としてはMAXの10です。(組木屋評価では、加工中に「ぐわー」とか「うぉー」とか叫びたくなるぐらいのものが、加工難度10に相当します。)

切削でかなり熱を加えると樹脂が湧き出てくるが、すぐに冷えて固まる。←この性質はパロサントと共通。樹脂と木屑とが鋸刃の目に詰まりやすく、取りにくくなる。目に詰まったまま刃を進めようとすると、さらに摩擦熱で熱が加わり、にっちもさっちもいかなくなる。

油分が多いが、融点が高いように感じる。白太部分でも油分は感じるが、心材の方が圧倒的に多い。

硬さのムラがそこそこあり(パロサントほどではないけど)、しかも見た目ではどこが硬いのか軟らかいのか予測がつかないので、ビット研削で精度を出すことも困難。(パロサントの方がだいぶん軟らかく感じて、ムラはさらに大きい。)

白太と心材の硬さの差は少ない。白太部分の方が硬さのムラは大きい。繊維方向による硬さの差は、2~3倍程度だと思うが、加工中は緑に変色していないため、全体的に黄土色~茶色で、繊維方向が見えにくい。また、木屑がモソモソしてまとわりつくので、さらに木の表面が見えにくくなる。そもそも繊維方向が複雑すぎて、加工中にすべて把握してられない。そんなこんなで、知らないうちに形がビミョーに歪んでしまう。手仕事で細かな精度を出すのが難しい。

【仕上】メビウスの指輪は#1500まで磨きました。(無塗装です。)仕上面は蝋(ロウ)みたいな手触りで、しっとりした感じになる。(パロサントともよく似ている。)

左は普通のデジカメで出来るだけ近寄って撮った写真。中央と右のは、デジタルマイクロスコープでさらに寄って撮った写真。右の写真の右側にはクラックスケールの、0.10mmの線を当てています。(デジタルマイクロスコープの写真はバックの色とのバランスで勝手に色補正をしてくれているため、あまり緑色に見えなくなってしまった。)

油分が多く、しかも硬いためヤスリは利きにくいが、丁寧にやればゆっくりとは研磨される。粗目(#100)の紙ヤスリでは、抹茶オーレの粉みたいな色、もしくはきな粉みたいな色の木屑がでる(パロサントも同じような色)が、#400ぐらいの細目になると、ミントアイスみたいな、ほとんど白に近い青緑色の木屑になった。濃い目の黄土色の木からごく薄い青緑色の木屑が出る、という不思議。

写真は、#400の紙ヤスリで研磨中の木屑の色。材と全然違う色なのが不思議で面白い。

YouTubeで、リグナムバイタを切って削って磨いて研いで、包丁を作る、という動画がありました。その映像ではもちろん早送り編集されていたのですが、実際にはどんだけ時間がかかったのだろうか、と思います。作られた方の集中力と忍耐力と根性に脱帽です。

磨いた直後は、つるっつるてっかてかで光沢も出るのだが、しばらくすると表面に樹脂が湧いてくるのか、艶が消えてしまう場合がある。でも、布とか指で磨く程度で、艶は復活する。

【その他】

リグナムバイタと、同じハマビシ科のパロサントという木とは、別の属とは思えないくらい見た目も材質もよく似ている。(区別をせずにどちらもリグナムバイタという名称で販売されていることがよくあるらしい。)銘木図鑑第1回の「パロサント」の記事にも同じことを書いていますが、それらの違いについて。

現在はリグナムバイタもパロサントも、ともにワシントン条約の附属書Ⅱに記載されているので、輸出入には許可が必要。そのため実際に輸入販売をされている業者さんでは樹種(学名)まで正確に把握されていると思いますが、昔輸入された材や転売をされているものでは、混同されているものがありそう。

組木屋で入手したリグナムバイタとパロサントの写真。どれがリグナムバイタでどれがパロサントか、この写真で区別できる人はたぶんいないだろうと思います。私は実物を見ても区別する自信がありません。

(見た目だけでは無理ですが、加工をすれば識別できるようになった、と思っています。たぶん。。。)

ちょっと昔の資料(1997年発行「カラーで見る世界の木材200種」)とかでは、リグナムバイタとパロサントとは区別されておらず、リグナムバイタの項で別名としてPalo santoという記述があったりします。

もうちょっと最近の資料(2014年発行「【原色】木材加工面がわかる樹種辞典」)では別種として紹介されていて、「最近、リグナムバイタとして流通している材はパロサントが多い」と記述されていました。

組木屋で初めに入手した材は、大阪の銘木店で「リグナムバイタ」として売られていたもので、銘木図鑑第1回の記事も、元々はリグナムバイタの紹介として書いたのですが。。。

その後、リグナムバイタとパロサントとを区別して販売されているところから両方の材を入手し、比べながら加工したところ、実は、初めに入手した材は「パロサント」だったと判断するにいたり、第1回の記事を「パロサント」として大幅に加筆修正しました。

いつか、リグナムバイタとパロサントとの違いについてをまとめた記事も書きたいと思っています。

取り急ぎ、「リグナムバイタとパロサントの違い」を簡単にまとめた表を作ったので、貼っておきます。(クリックすると拡大できると思います。)


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